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専修学校先進的教育研究開発事業
「美術・デザイン分野における新しい教育実践プログラム研究」

研究期間 平成15年度
研究テーマ    専修学校先進的教育研究開発事業
「美術・デザイン分野における新しい教育実践プログラム研究」
代表校 中国デザイン専門学校
事業の概要 美術・デザイン分野における新しい教育と物作り教育の両面から、この分野独特の教育システムを模索し、授業時間と実習作品との新たな評価方法を探り、画一的ではない評価と学習効果との関連からこれからの教育の可能性についての調査研究を行う。
成果  今回の研究ではこの2つのテーマにそって研究を行ってきた。まず、アンケート調査を2次にわたって実施し、研究において調査目的に応じて細かく実情を聞くことが出来るよう配慮を行った。
 この結果をもとに、更に実地調査を行った。対象は2つのテーマによってそれぞれ数箇所ずつ施設を選択し、今回の研究に沿った内容を見学させて頂くこととなった。調査対象は大学、専門学校、企業、公設施設など様々であったが、目的は人材育成であり共通のものや学ぶ点は多々あったと感じている。
 今回の研究調査から、美術・デザイン分野では、授業内容やそれに伴う必要な時間に対する評価の流れは、必ず一定の方向ばかりではないということが明らかになった。評価の観点や方向により、作品のような結果だけの評価もあり、そこに到達するためのプロセスを評価としている場合も多いのである。
 しかし、今回のアンケート調査でも、評価について同様の悩みや試みの回答も多くあったが、評価自体のあり方を明確にできていないように思える。制作内容により個人差があるにもかかわらず、「授業時間」や「単位」で画一的な評価をしている現状と評価へ疑問を感じている学校も多いということである。授業内容に対する成果物や過程に対して行われる評価は、指導する講師の個人判断である。そのため、担当が変われば、評価も変わる場合がある。逆に、プレゼンテーション形式の合評会による評価では、評価判断する側の共通の基準だけでは、その枠を超える評価はできないようにも思える。訪問調査では、その施設だからできるという限定のイメージから脱せられないのである。その原因として、何を持って「本来の正しい評価」であるのかの共通認識が存在していないことではないかと思える。
 本研究を踏まえて、我々は、美術・デザイン分野における現場で実際に使える明確な評価基準の必要性を痛感した。従来の授業内容とその時間数によって行われる評価の基本的な判断への対応は当然だが、時間軸を意識しない評価もあり、自主制作のような学ぶ側からのアプローチに対する評価、第3者による評価への評価など、時と場面と立場によって、まだまだ多様な評価を巡る判断が必要であると認識した。
 しかし、その判断基準は、この分野が関わる場や担当者によってつくられることが多く、誰もが参考となる共通の基準は、実は明確には存在していないのではないだろうか。これからのためにも、実際に共通の評価基準を提示する必要があると考える。それは、何を持って「本来の正しい評価」であるかの答えであり、誰もが納得できるよりどころでもあり、いわば、評価判断のスタンダード化への取り組みである。
 今回の研究は私たち美術デザイン分野の専門学校にとって将来役に立つことを目指して行ってきたけれども、同様な問題は他の分野や施設学校でも問題視されており、これからの教育に有益に用いることが出来るよう継続して行くことができれば幸いである。